米中貿易戦争が2019年6月5日現在、加熱してきています。本日はこの米中貿易戦争が当事者である、アメリカ、中国、そして我々の日本の経済へ与える影響をチャートから解説していきます。
アメリカは対象品目を拡大し続けていおり、関税の引き上げ(25%)も併せて行っています。一方、それに対抗する形で中国も対象品目を拡大しましたし、25%への関税引き上げを行っています。
そしてアメリカは第4弾の制裁として約3250億ドルの対象品目に対し関税引き上げを宣言し、中国に圧力をかけています。
両者の主張は真っ向から対立しており、アメリカはファーウェイ(華為技術)の輸入規制にまで踏み込んで譲歩を引き出そうとしています。
そんな混沌を極める状況ですが、チャートから読み解くと一体どうなのか?を考えてみましょう。
米中貿易戦争がアメリカ、中国、日本の経済に与える影響を チャートから分析
各国のチャートを見る前に、まずは前提条件として、どのようなチャート分析の手法を使うか説明していきます。
マルチタイムフレーム分析
私がよく使用しているのはマルチタイムフレーム分析という手法です。
これは、異なる時間軸(つまり日足をベースにするなら、週足、月足に相当する時間)を同時に表示します。
大きなトレンドがどちらへ向かっているのか、そして現在の値動きはそれに従っているのかそれともトレンドの転換が起こっているのかを察知することが出来る分析手法です。
EMA(指数平滑移動平均線)の設定
EMAは5(水色の線)、20(青線)、40(緑色の線)をベースにしつつ、
赤線が40の週足相当である40×5日(土日を除き、1週間=5日とカウントする為)=200日EMA、
黒線が月足相当の200日×4週=800日EMAを表しています。
ボリンジャーバンドの設定
ボリンジャーバンド は日足の場合、
期間1(青)は20日
期間2(赤)は週足相当の20×5日=100日
期間3(緑)は月足相当100×4週=400日
をパラメーターとして使用しています。
全ての期間で+2シグマ、-2シグマを表示する設定にしています。
下記で示しているTradingViewのチャートでは
EMAとボリンジャーバンドをマルチタイムフレーム分析しており、
それに一目均衡表の雲を加えた、私の独自テクニカル指標です。
EMA(指数平滑移動平均線)、ボリンジャーバンド 、一目均衡表の読み方については割愛しますが、簡単な解説についてはこちらが分かりやすいです。
なお、ボリンジャーバンド 、一目均衡表まで解説に加えると複雑になる為、今回はEMAのみから分析していきます。
それでは前置きが長くなりましたが、チャートを見ていきましょう!
アメリカの株価指数チャート
アメリカの株価指数は有名なところでNYダウ、S&P500、ナスダック指数があります。
それぞれ計算が違いますので自ずと示してくれるものも異なってきます。
NYダウは工業株30種の指数ですので、対象が少なく、よく耳にはするもののマーケット全体の値動きを表すとはいえません。とはいえ、よく耳にするということは皆が意識しており、アメリカを代表する株価指数であるといえます。
それに対し、S&P500は、NY市場の時価総額の約75%をカバーしています。よって市場全体の値動きを反映した株価指数と言われています。
またナスダック指数はアメリカの新興市場の株価指数となっています。
NYダウ
2018年末に安値をつけたところから史上最高値更新に迫る勢いで2019年4月まで上昇。
その後は一貫してダウントレンド。
(TradingViewより)
EMA(指数平滑移動平均線)からの分析
2019年4月につけた高値から、ダウントレンドが継続中。
依然、超長期の黒線は上向きではあるものの、長期の赤線はほぼ横ばい状態。そしてローソク足自体も赤線を割り込んできていることから目線は下方向。
S&P500
2019年4月末に2018年の高値を抜き、非常に強い動きで推移していたものの、そこからはNYダウと同じ値動き。
(TradingViewより)
EMA(指数平滑移動平均線)からの分析
2019年4月につけた高値から、ダウントレンドが継続中。
依然、超長期の黒線は上向きではあるものの、長期の赤線はほぼ横ばい状態。そしてローソク足自体も赤線を割り込んできており、NYダウ同様に目線は下方向。
ナスダック指数
押し目らしい押し目もつけないまま、2019年4月末に2018年の高値を抜き、非常に強い動きで推移していたものの、そこからは加速度的に下落。
(TradingViewより)
EMA(指数平滑移動平均線)からの分析
2019年4月につけた高値から、ダウントレンドが継続中。
依然、超長期の黒線は上向きではあるものの、長期の赤線はほぼ横ばい状態。そしてローソク足自体も赤線を割り込んできており、NYダウ、S&P同様に目線は下方向。
若干ではあるが、NYダウ、S&P500より、上げ幅に対する下げ幅の割合が大きいことは注目しておきたいところです。
ナスダック指数は前述の通りアメリカの新興市場の株価を指数化したものです。アメリカの新興市場は世界を牽引していることもあり、景気の回復はナスダックから、景気の悪化もナスダックから始まります。
そこから考えると、アメリカ経済が米中貿易戦争によりダメージを受け始めていることを示唆しています。
中国の株価指数チャート
中国の株価指数は上海総合指数、香港ハンセンがあります。
上海総合は主に中国人投資家、香港ハンセンは外国人投資家が参入している市場です。今回は上海総合を見ていくことにしましょう。
上海総合
アメリカとはうって変わって、2019年末まで下げ続けていました。そこから2019年4月まではアメリカ同様、大きな上げがありましたが、4月末に大幅な下げがあり、現在はもみ合い中です。
(TradingViewより)
EMA(指数平滑移動平均線)からの分析
2019年4月につけた高値から、ダウントレンドが継続中。
超長期の黒線下げからようやく平行になりつつあり、長期の赤線もほぼ平行。つまりマーケットは現在方向感がなく、どちらにいくかを見定めている状態にあります。
2019年末に大阪でG20があります。そこで米中首脳会談が行われ、事態が進展するのかを見守っている感じを受けます。
日本の株価指数チャート
日経225がなんといっても有名です。あとはマザーズ、ジャスダックなどの新興市場の指数があります。
今回は代表的な株価指数である日経225を見ていきましょう。
日経225
アメリカ、中国とはまた違った流れになっていることが見てとれますね。
2018年末につけた安値から、2019年4月まで上昇しましたが、アメリカ、中国と比べて明らかに戻しが弱いことが分かるかと思います。そして現在は再び急速な下げとなっています。
(TradingViewより)
EMA(指数平滑移動平均線)からの分析
2019年4月につけた高値から、ダウントレンドが継続中。
超長期の黒線は滑らから上昇から平行になりつつあります。長期の赤線は直近で見ると下落へと転じています。つまりマーケットはアメリカ、中国とは異なり、より下げ基調へ入った可能性が高いと考えられます。
米中貿易戦争がアメリカ、中国、日本の経済に与える影響をチャートから分析 まとめ
米中貿易戦争が制裁措置をもって発動したのが2018年7月で、その後複数回に分けて報復措置として対抗し続けています。
しかし、アメリカ、中国は2019年4月まで大きな株価上昇をしました。ここから読み取れることは、両国共にどこかで妥結するのではという思いがあったのでしょう。それがトランプさんの強硬な姿勢に応じて徐々に潮目が変わり始め株価も下落していった。
一方で、日本に関しては2019年4月までの上げもアメリカ、中国ほどではありませんでした。加えて2019年6月5日現在では直近の安値を下回って、下げが加速しています。
これはアメリカ、中国の貿易摩擦が激化することにより、日本の輸出産業にダメージがあると考えられているからでしょう。
日経225を構成する銘柄は輸出産業が多いです。そのため、アメリカ、中国が貿易戦争で疲弊していくと企業の体力がなくなり設備投資も少なくなる。
その結果、日本からの輸入も少なくなることを見越しての現状の弱気相場に繋がっているものだと考えます。
見方としては色々できますが、チャートから現状を分析し、仮説を立ててみる。それによって世界経済を読み解く力は上がってきます。
もちろん経済は必ずしも分析通りに動きません。「現状はこのように考えられる」というだけで、将来の予測はできません。しかし、
私は15年前からチャートから世界経済を分析するということをやってきました。マクロ経済分析が元々専門分野ですが、チャートと複合して分析するようになり、世界経済の連動性が見えるようになりました。
面白いことに、公表されるニュースなどのファンダメンタルズより早くチャートは反応します。だからこそチャートを読み解く価値があります。
よかったら世界経済を読み解くヒントとして参考にしてみて下さい。
本日もありがとうございました!
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